【講演内容】
食品交換表第7版の改訂ポイントは、従来までのエネルギー管理のほかに、血糖管理を意識した説明が各所に追加されたこと。また炭水化物のエネルギー比が50〜60%となっているように、さまざまな症例に合わせて柔軟に対応できるものとなった。
さらにメディアで低炭水化物食が話題になっていることから、極端な低炭水化物食への注意喚起も行われている。炭水化物を減らせば血糖値が下がるものの、極端な低炭水化物状態は、患者自身の食習慣に馴染まないため長続きしないなどの弊害もある。
◆新しく追記された血糖管理の視点:
グラフは、2型糖尿病の食事療法と運動療法の必要性を示したもの。
正常な患者の血糖値は、空腹時血糖値が70mg/dl以上110mg/dl未満。食後でも血糖値は140mg/dlで維持。しかし、糖尿病患者さんの場合は、血糖値は200〜300mg/dlになる。赤枠部(下段右部)のように、仮に食事療法も運動療法も行わず、薬物療法だけで血糖管理を行うと、血糖値の乱高下を残したまま全体的に血糖を下げてしまうため、低血糖が起こったり高血糖が残ってしまう可能性があることを示している。
青枠部(下段左部)のように食事療法と運動療法を行い、血糖値の山と谷を平準化し、必要に応じて薬物療法を追加することで、血糖管理が上手くいくことを示している。
血糖値には、朝・昼・夜の3つの山があり、この山の大きさをできるだけ小さくすることが、合併症の予防につながる。これからの食事指導は、エネルギー量をチェックするだけではなく、食後の血糖値に直結する糖質量もチェックする視点が重要。
また、食品交換保表第7版では、表1、表2、表4、調味料に炭水化物・糖質・食物繊維含有量の表が入った。この部分は、ぜひ現場で活用していただきたい。
もう患者に「お菓子はダメよ」という指導ではなくなる。何故なら、食品交換表を利用することで、「今食べているお菓子の糖質量は**だから、こちらのお菓子に変えると血糖値が僅かでも良くなる」と具体的に指導することができるから。
◆極端な低炭水化物食への注意喚起:
米国や欧州などのガイドラインにおいては、炭水化物の摂取量をエネルギー比で50~60%としており、RCTを解析したEBMに基づく勧告では55~65%が提案されている。また、米国糖尿病協会(ADA)は炭水化物を少なくとも1日130gは摂取するように勧めている。
日本では、極端な低炭水化物食を提唱する人たちもいるが、糖質の摂取量を1日130gのラインはキープするようにして合併症も含めた総合的な指導をしていただきたい。