Pro-Labo. ○○してみました

第6回 英国栄養士会が発表した 「2018年行うべきではないダイエット ワースト5」(後編)

【アルカリダイエット】
どんなダイエット?
アルカリ性の食品を多くとり、酸性の食品を少なくとるという食事法でダイエットを目指すもの。これにより、血液中のpHバランスを変えて不健康になる可能性が減るという。

BDAの見解は?
このダイエットは「生理学における基本的な誤解に基づいている」と主張している。

pHの変化で体重が増減するということはナンセンス。
さらなる誤解として、ヒトの血液中のpHは7.35~7.45に保つように調節されており、食事のよる血液中のpHの変化は起こりえない。尿中のpHは食事の影響により変化するが、血液中のpHとの関連はないうえに、pHの変化で体重が増減することも考えがたい。

さらには、「この食事法は“がん”の治療になる」、「酸性の食品は“骨粗しょう症”の原因になる」という誤解もあり、当然のことながらこれらを証明するエビデンスもない、という。

健康における食品のpHは、ダイエットに効果をもたらすとはいえない。「食品中のpHに関係なく、より健康的な食事をする、もしくは加工食品を減らすことのほうが、減量できる可能性がある」とBDAは言及している。

【ケトジェニックダイエット】
どんなダイエット?
いまや日本でも注目を浴びている「糖質制限食」によるダイエット法である。
炭水化物を1日約20~50gもしくは1日の総摂取カロリーの約5%に抑え、脂質を多く、適切なたんぱく質量を摂取するという食事である。穀類、乳製品、大豆、野菜、果物、イモ類に含む糖質やでんぷん質を厳格に避け、炭水化物は主に、でんぷん質の少ない野菜、ナッツ類、種実類からとる。

「食事中の糖質を制限することにより、ケトン体の生成を高め、脂肪をエネルギーとして使うことで、減量や空腹感のコントロール、健康状態を良くする。」ということが期待されている。

BDAの見解は?
厳正なる管理栄養士の管理のもと行えば、この食事はとても効果的な「てんかんの治療食」になりうるとしている。

しかし、健常な人が減量を目的として取り入れる際、思考回路のぼやけ、無気力、空腹感の増加、睡眠障害、吐き気、消化不良、口臭、運動機能の低下等の副作用が発生するリスクがあると考えられている。

また、減量効果については、1日の摂取エネルギー量を減らし、人がつい多く食べてしまう食品を除く、いわゆる「エネルギー制限」によるものであると主張する。

入念な計画のもと、短期間で減量する方法としては効果的であっても、長期間行うことは難しい。また、初期の減量の多くは、体液の減少によるものであるという。糖質を含む一つの食品群を極度に制限することは“得策であるとはいえず“、特にビタミン、ミネラル、食物繊維が不足した食生活となりやすく、“バランスの良い食生活をおくることは難しい“という。さらに、食事で脂質を多く摂取するのであれば、脂質の“種類”も考慮しなければならない、と指摘している。

--かわるPro事務局より--
「〇〇を食べると健康にいい」、「〇〇を食べないほうがいい」、「〇〇以外は好きなだけ食べてもいい!」などのダイエット法は、一見簡単に減量できるおいしい話のように思えるが、これらすべては“健康的に減量する方法”であるとは言えないことがわかりますね。

さて、管理栄養士として考えるべきこととして何があるでしょうか。
“メディアで話題となっているダイエット法”について相談を受けた際、管理栄養士として以下のポイントをきちんと確認することが重要なことであると考えます。大事なことは「効果」だけではない、ということです。

★健康面:人が生きるために必要とするエネルギーや栄養素をしっかりととることができる方法であるか。
★効果:本当に痩せることができる方法であるか。
★必要性:本当に痩せる必要がある人であるか。
★精神面:その人にとって実行しやすく、心地よく継続できる方法であるか。
★経済面:金銭的負担なく、現在の生活に大きな支障をきたすことなく実行できる方法であるか。
★安全性:健康障害が起きることなく、健康的に減量できることを科学的に証明されている方法であるか。

メディアが発信することを疑うことなく信じきることは言語道断。管理栄養士として、対象者の食事や生活環境、経済的な部分も考慮し、その人が楽しく長く健康でいられる減量方法を提案することが対象者にとっての一番の幸せではないでしょうか。

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■参考
The British Dietetic Association (BDA)
「Top 5 worst celeb diets to avoid in 2018」
https://www.bda.uk.com/news/view?id=195
(2018-3-12閲覧)