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第7回 進化し続けるテクノロジー…日本の孤食問題、解決なるか!?

近年VR(バーチャルリアリティ※1)市場が熱いです。今ではエンタテイメント分野以外に、手術シミュレーションや精神疾患の理解を高めるための疑似体験を可能にするなど、医療業界でもVRを使った様々取り組みが行われています。今回は、孤食対策に挑むテクノロジーをご紹介したいと思います。

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VRとはバーチャルリアリティの略であり、「仮想現実」を意味します。コンピューターや電子技術を用いて仮想空間や映像空間を人工的に作り出し、ヒトの五感を刺激し、まるで現実であるような体感をさせる概念や技術をいいます。この技術を用いることにより、いつでもどこでも、まるで自分が違う世界にいるような疑似体験を感覚として味わうことができます。今はVRゴーグルを装着して、コンテンツを楽しむのが一般的です。


深刻化する孤食問題
農林水産省がまとめた2017年版の「食育白書」によると、1日のすべての食事を1人でとる日が週の半分を超える人は15.3%(n=1786)であり、“孤食“の比率が上昇したという結果となりました(1)。背景には、高齢者も含める単身や少人数世帯が増えていることなどがあり、地域や職場を通じ、食事を共にする機会をつくる活動を推進するよう促しています。

注目すべきは食育白書にある「ほぼ毎日一人で食べる(n=479)」と答えた“孤食”の理由。1日の全ての食事を1人ですることについて、「一人で食べたくないが、食事の時間や場所が合わないため、仕方ない」(35.5%)、次いで、「一人で食べたくないが、 一緒に食べる人がいないため、仕方ない」(31.1%)でした。こう見ると、誰かと一緒に食べたいと思っている人は多いようですね。

共食が与える食育の効果はすでにいくつか報告されており(2) (3) (4)、健康日本21(第ニ次)では「共食の増加」が目標の1つとなっています。また、高齢者においても孤食はうつを発症するリスク要因の1つであると考えられており、共食の重要性が報告されています(5)

現在日本の孤食対策として行われている有名な取り組みの1つに「子ども食堂」があります。子ども食堂は、2012年から取り組みが広がり、現在では全国各地に150か所以上存在します。ここでは、貧困家庭や一人親の家庭、家族と一緒に過ごす時間が少ない、さらに満足な食事をとれないなどによる子ども達を対象に、地域住人らがボランティアで子どもに無料もしくは低料金で食事を提供し、さらにはコミュニケーションもはかるなどして子供たちの健康づくりに大貢献しています。しかし、大人の孤食対策までにはまだ多くの取り組みがされていないのが現状です。


1人が嫌なら大勢で♪ 寂しいなんて言わせないVRコンテンツ
「一人で食べたくない、でも食べざる負えない!」…そんな1人暮らしの方にご紹介したいのは、兵庫県あわじ市が開発したVRコンテンツ。その名も「“バーチャン”・リアリティ(6)」。これは兵庫県の南あわじ市が開設したものであり、1人暮らしの人でもスマートフォンさえあれば、まるで大勢と食事をしているような感覚を得ることができる、疑似的な食卓を楽しめるVRコンテンツです。「ひとりで寂しい食卓を、みんなで楽しむ食卓」に変えることをコンセプトとし、バーチャルならぬ、バーチャンをはじめとした、あわじの住民たちと食卓を囲む画期的な内容となっています。

使い方はとても簡単。スマートフォンで動画を再生し、VRビューアーで視聴しながら食事をする、これだけです。“朝ごはん編”と“夕ごはん編”があり、360度のVR動画で見る方向に合わせて、まるで実世界にいるように景色もかわることから、よりリアルに心満たされる温かい家族の食事を体験することができます。一人の食事が寂しいと思う人にはもってこいのコンテンツであると言えるかもしれません。

「VR×食事」は、斬新で画期的な取り組みに思えます。しかし、テクノロジーの進化にともない、日本の食事のあり方も良い方向に変わってくるかもしれないですね。将来的には地域の取り組みに加え、VRが一役も二役も担うツールとして投入される時代が到来するかも…日本のテクノロジーにこうご期待ですね!


■参考文献
(1) 平成29年度 食育白書 全文:農林水産省
http://www.maff.go.jp/j/syokuiku/wpaper/attach/pdf/h29_wpaper-5.pdf (2018/6/8 閲覧)

(2)Gillman MW, Rifas-Shiman SL,et al. Family dinner and diet quality among older children and adolescents. Arch Fam Med. 2000 Mar;9(3):235-40.

(3)Kusano-Tsunoh A, Nakatsuka H, et al. Effects of family-togetherness on the food selection by primary and junior high school students: family-togetherness means better food. Tohoku J Exp Med. 2001 Jun;194(2):121-7.

(4)Neumark-Sztainer D, Hannan PJ, et al. Family meal patterns: associations with sociodemographic characteristics and improved dietary intake among adolescents. J Am Diet Assoc. 2003 Mar;103(3):317-22.

(5)Tani Y, Sasaki Y, Haseda M, Kondo K, Kondo N: Eating alone and depression in older men and women by cohabitation status: The JAGES longitudinal survey. Age Ageing 44 (6): 1019-1026, 2015

(6)あわじ国バーチャンリアリティ
http://www.awajikoku.com/vr/ (2018/6/8 閲覧)