【講演内容】
糖質は「単糖類、少糖類、多糖類」に分類される。多糖類のでんぷんは、食後の血糖値の動きも穏やか。単糖類になるほど、速やかに血糖値を上げる特徴がある。
「果物=フルクトース」というイメージで思われがちだが、果物により含まれる糖の量や種類もさまざま。糖質の種類という観点から、きちんとその組成を知って、患者にも紹介したいもの。
果物は、体にとって好ましい栄養成分が含まれているので、ぜひ患者さんには食べてほしい食品。果物を多く食べる人は、あまり食べない人と比べ、脳卒中や心筋梗塞の発症リスクが最大19%減少することが、厚生労働省研究班の調査でわかっている。
また、米国の調査では、果物は糖尿病発症を減少させるという成績※もある。
※BazaanoLA, JoshipuraKJ, Tricia YLet al : Diabetes Care 31 : 1331-1317, 2008
ただし、糖尿病患者の中には、果物は太らないと思っている人もいて、過剰摂取につながることもケアする必要があります。特に果物に含まれている果糖は、ショ糖の1.1〜1.7倍ほど甘味度が高いので、果糖の甘味についてしっかり説明した上で、患者の状態にあった果物のアドバイスをしましょう。
その際に、もう1つ参考にしたいのが、果物に含まれる食物繊維の含有量。
果物の食物繊維含有量を見ると、ブルーベリーやキウイは食物繊維が多く含まれているが、バナナやぶどうの食物繊維含有量は決して多くはない。
また、例えば、りんごを丸かじりする欧米人と比べて、日本人は皮をむいて食べる習慣がある。果物の皮には食物繊維が豊富に含まれており、食物繊維は血糖値の急激な上昇を抑制する効果もある。
咀嚼や栄養の面から考えれば、皮をむかずに食べることができる果物はできるだけ皮をむかずに食べる方が良いだろう。
糖尿病患者の果物の摂取は、食品交換表にもあるように1日1単位が目安。
ただし糖尿病患者の場合、空腹時に同じものを食べても、健常者よりも血糖値が変動しやすく、食後血糖値にも大きな個人差があることは考慮する必要がある。
果物をつい食べ過ぎてしまう患者さんの場合は、
このような工夫で、果物の摂取量を抑制することがポイントとなる。
果物は低GI食品であることに加え、果物そのものが持つ本来の甘味で、糖尿病患者の「甘さ」の欲求に応えることもできる優秀な食材。
日本には四季があり、季節ごとに新鮮な果物をおいしく味わうことも楽しみの1つ。
果物の重要性及び適量摂取に加え、個人の嗜好に合わせた食の楽しみを指導の中でも伝えていただきたい。