糖尿病の予防と食事

基本的な事柄

   糖尿病は、膵臓から分泌されるインスリンというホルモンの分泌量の不足や作用不足から起こる病気です。インスリンが不足するため、食物から取ったブドウ糖が、体内で十分に利用されずに血液中に残ってしまいます。そのため高血糖になり、尿中に糖が排泄される病気です。
   いろいろな代謝異常を起こし、その結果、視力障害、腎臓障害、神経障害、心筋梗塞、脳梗塞などさまざまな合併症を引き起こします。糖尿病になるとこれらの合併症の予防のためにも、生涯にわたって治療を続けることが必要になります。
   糖尿病のタイプは、①1型糖尿病と②2型糖尿病に分類されます。
   原因は、①の1型糖尿病の多くは何らかの原因で自己免疫異常を起こし、インスリンを分泌する膵臓のβ細胞を破壊し、体内のインスリンの分泌がなくなります。β細胞が破壊される原因は、まだ十分には解明されていません。比較的若年層に発症し、治療にはインスリン注射が不可欠になります。
   ②の2型糖尿病の場合は、遺伝的素因があり、そのうえに肥満や過食、運動不足、ストレスなどの生活因子や、加齢、感染、妊娠などが引き金になって発症します。日本人の場合、90~95パ-セント以上が②のタイプで、発症する年齢も40~60歳代の中高年が圧倒的に多いのですが、最近では小学生や中学生にも見られるようになってきました。治療には必ずしもインスリン注射を必要としません。肥満者が多いということが特徴のようです。遺伝的な要素や加齢は防ぐことはできませんが、肥満の解消と肥満の予防、運動不足などは自分の心掛け次第で解消することができます。肥満は糖尿病のほか、多くの生活習慣病の誘因にもなります。日常の生活習慣を見直し、間食、外食、アルコールに注意し、食事の取り方に気を付け運動を習慣付けることが糖尿病を予防するうえで大切です。

食生活のポイント

   食事は、①1日に取るエネルギ-を取り過ぎない。②栄養のバランスを良くする。③ 3食を規則正しく食べることが基本になります。

1.エネルギ-を取り過ぎない

   1日に取るエネルギ-の量は、標準体重を基準として生活の中での動きの度合いに見合ったエネルギ-を取るようにします。一般的に標準体重は、身長(m)×身長(m)×22で算出します。1日の生活活動強度がやや低い(例として、1日の歩行時間が1~2時間以内の主婦やデスクワークの人)の場合は、標準体重(kg)×25(肥満)~30(やせ)キロカロリ-で計算し、算出された数値が1日の必要エネルギ-量になります。

2.栄養のバランスを良くする

   栄養のバランスを良くするには、食事は、主食、主菜、副菜をそろえた形にします。糖質の多い食品(主に穀類、いも類、豆類、果物など)、たんぱく質の多い食品(魚介類、肉類、卵、チ-ズ、大豆や大豆製品、牛乳など)、ビタミン、ミネラルの多い食品(野菜類、海藻、きのこ類、こんにゃくなど)を使った料理を3度の食事にそろえて取るようにしましょう。
   油脂類の使い過ぎは、エネルギ-が多くなる原因になるので控えめにします。また、動脈硬化の予防のうえからも植物油(魚油も含む)を使用するようにします。薄味を意識し減塩でもおいしく食べられるように香味野菜や香辛料、柑橘類、酸味などを利用し、砂糖の取り過ぎにも気を付けましょう。
   アルコ-ル飲料や嗜好飲料は原則として控えます。アルコ-ルや糖類を多く含む嗜好飲料の取り過ぎはすい臓のβ細胞に負担を掛けたり肥満の原因になり、また、栄養のバランスを乱します。

3. 規則正しく3食を食べる

   1日に2食や、間隔の空き過ぎた食事の取り方はよくありません。また、夜遅い食事もよくありません。外食は、高エネルギ-、高脂肪、高糖質の料理も多く栄養のバランスが乱れがちです。利用するときは油分や糖分の取り過ぎに注意し、いろいろな食品が使用されている料理を上手に選んで、適量を食べるようにしましょう。
   このほか、適度な運動も大切です。日常の生活の中に食後のウオ-キングなど取り入れ、いつでも、どこでも、1人で出来る運動を習慣化し、肥満を防ぎ糖尿病などの生活習慣病の予防を心掛けましょう。

参考資料:「糖尿病治療ガイド2020ー2021」日本糖尿病学会編・著
                                  (更新 2023.12)