ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 健康・医療 > 健康 > たばこと健康に関する情報ページ > 平成18年度たばこ・アルコール対策担当者講習会 > 禁煙支援マニュアル・ニコチン依存症管理料について

禁煙支援マニュアル・ニコチン依存症管理料について

平成18年度「たばこ・アルコール対策担当者講習会」
(2006年11月22日、東京)



禁煙支援マニュアル・ニコチン依存症
管理料について


大阪府立健康科学センター
健康生活推進部 増居志津子



禁煙治療の保険適用の背景

喫煙による健康被害の拡大とその対策の必要性
  喫煙による超過死亡数 11.2万人(総死亡の12%)
男性の肺がん死亡率は、増加が予測
禁煙の困難性と治療の必要性
  ニコチン依存症は再発しやすいが繰り返し治療することにより完治しうる慢性疾患である
禁煙治療の有効性と優れた費用対効果
  禁煙介入は短時間でも禁煙率を高める効果がある。
さらに薬剤を適切に使えば、禁煙率は2倍高まる。
禁煙治療は保健医療プログラムの中でもとくに経済効率性に優れている



喫煙習慣の本質はニコチン依存症

喫煙習慣の本質はニコチン依存症の図



医療費削減額と禁煙治療費(累積)
−依存度の高い準備期の喫煙者に限定−


禁煙治療導入後10年目で、49億円の黒字に転じ、15年目には866億円の黒字となる

医療費削減額と禁煙治療費(累積)のグラフ



図



標準禁煙治療プログラム

標準禁煙治療プログラムの図



施設基準

1. 禁煙治療を行っている旨を保険医療機関内の見やすい場所に掲示していること。
2. 禁煙治療の経験を有する医師が1名以上勤務していること。
3. 禁煙治療に係る専任の看護師又は准看護師を1名以上配置していること。
4. 禁煙治療を行うための呼気一酸化炭素濃度測定器を備えていること。
5. 保険医療機関の敷地内が禁煙であること。なお、保険医療機関が建造物の一部分を用いて開設されている場合は、当該保険医療機関の保有又は借用している部分が禁煙であること。
6. ニコチン依存症管理料を算定した患者のうち、喫煙を止めたものの割合等を、別添2の様式8の2を用いて、社会保険事務局長に報告していること。



ニコチン依存症管理料の施設基準に係る届け出

届け出先: 地方社会保険事務局
提出書類:
 1. 特掲料の施設基準等に係る届出書
 2. ニコチン依存症管理料に係る届出書添付書類
禁煙治療を担当する医師について
専任の看護職員について
当該保険医療機関に備えている呼気一酸化炭素濃度測定器の名称および台数
 3. 勤務する従事者の名簿
 4. その他の添付書類
医師免許の写し、禁煙治療の経験がわかる資料
専任の看護職員の免許書の写しと出勤簿など勤務の実態を証明するもの

注) 地方社会保険事務局によって若干異なる



禁煙治療成果の報告

A. 本管理料を算定した数   名
B. 12週間にわたる計5回の禁煙指導を終了した者
C.  Bのうち、禁煙に成功した者
D.  Bのうち、禁煙に成功しなかった者

喫煙を止めたものの割合(%)=C/A



対象患者

以下のすべての要件を満たす者であること
 1. ニコチン依存症に係るスクリーニングテスト(TDS)で、ニコチン依存症と診断されたものであること。
 2. ブリンクマン指数(=1日の喫煙本数×喫煙年数)が200以上の者であること。
 3. 直ちに禁煙することを希望している患者であること。
 4. 「禁煙治療のための標準手順書」に則った禁煙治療について説明を受け、当該治療を受けることを文書により同意している者であること。



算定要件

「禁煙治療のための標準手順書」(日本循環器学会、日本肺癌学会及び日本癌学会により作成)に則った禁煙治療を行うこと
本管理料を算定した患者について、禁煙の成功率を地方社会保険事務局長へ報告すること
初回算定日より1年を超えた日からでなければ、再度算定することはできないこととする。

本管理料の新設による効果については、診療報酬改定結果検証部会による検証の対象とする。



禁煙治療のための標準手順書

内容
 I. 禁煙治療の流れ
禁煙治療プログラムの説明とスクリーニング
標準禁煙治療プログラム
入院患者または入院予定患者に対する禁煙治療の留意点
 II. はじめに
 III. 禁煙治療の方法
 IV. 禁煙治療に役立つ帳票
 V. 禁煙治療に役立つ資料

禁煙治療のための標準手順書の図

本手順書は、日本循環器学会(http://www.j-circ.or.jp/)、日本肺癌学会(http://www.haigan.gr.jp/osirase.html)及び日本癌学会(http://www.jca.gr.jp/)のホームページでダウンロードすることができる。



禁煙治療の実際−初回治療

1. 喫煙状況、禁煙の準備性、TDSの確認
2. 呼気一酸化炭素濃度の測定と結果説明
3. 禁煙開始日の決定
4. 禁煙にあたっての問題点の把握とアドバイス
自信がない、周囲に喫煙者が多い、お酒の席が不安
5. ニコチン製剤の選択と説明
薬剤の効果、副作用、使い方の説明
6. 次回の診察日の確認



禁煙治療の実際−再診(1)(2週間後)

1. 喫煙(禁煙)状況と離脱症状の確認
 禁煙できていたらまず褒めることが大切。
2. 呼気一酸化炭素濃度の測定と結果説明
 禁煙後の変化を説明。
3. 禁煙継続にあたっての問題点の把握とアドバイス
 タバコが吸いたい、禁煙するとイライラするなど
4. ニコチン製剤の説明
 薬剤の効果、副作用とその対処法の確認
5. 次回の診察日の確認



禁煙治療の実際−再診(2)(4週間後)

1. 喫煙(禁煙)状況と離脱症状の確認
 禁煙が続いていたら褒め、禁煙の効果を確認する。
2. 呼気一酸化炭素濃度の測定と結果説明
 禁煙していることを確認。
3. 禁煙継続にあたっての問題点の把握とアドバイス
 まだタバコが吸いたい、元気が出ない、体重増加など
4. ニコチン製剤の説明
 薬剤の効果、副作用を確認し、薬の減量について検討
5. 次回の診察日の確認



禁煙治療の実際−再診(3)(8週間後)

1. 喫煙(禁煙)状況と離脱症状の確認
 禁煙継続を強化。
2. 呼気一酸化炭素濃度の測定と結果説明
 禁煙していることを確認。
3. 禁煙継続にあたっての問題点の把握とアドバイス
 1本ぐらいなら大丈夫、ニコチン製剤の減量や中止に対する不安
4. ニコチン製剤の説明
 薬の減量や中止について検討
5. 次回の診察日の確認



禁煙治療の実際−再診(4)(12週間後)

1. 喫煙(禁煙)状況と離脱症状の確認
 禁煙継続を賞賛、12週間の振り返り、禁煙の喜びの確認、ニコチン製剤の使用状況の確認
2. 呼気一酸化炭素濃度の測定と結果説明
 禁煙していることを確認。
3. 禁煙継続にあたっての問題点の把握とアドバイス
 禁煙継続に対する自信の確認
 主治医として禁煙成功を喜んでいることを伝える



保険適用の問題点

1. 施設基準が厳しい
 敷地内禁煙、専任の看護師の配置、呼気一酸化炭素濃度測定器の購入
2. 保険適用患者の制限
 若年喫煙者、入院患者
3. 治療期間の制限
 12週間を超えて治療ができない、再治療がすぐにできない



禁煙治療の今後の課題

指導者教育の充実
禁煙治療効果の検証
健診や歯科領域における禁煙治療の制度化
重度のニコチン依存症患者に対する保険治療の制度化



健診の場におけるニコチン依存症のスクリーニングの提案

【基本的な考え方】
喫煙の本質はニコチン依存症であり、「繰り返し治療が必要な慢性疾患」(AHRQ、2000)と捉える
健診の機会を利用して、ニコチン依存症のスクリーニングと禁煙アドバイスやサポートを行うとともに、医療機関での保険による禁煙治療と連携する

健診の場におけるニコチン依存症のスクリーニングの提案の図



禁煙支援マニュアル

禁煙支援マニュアルの図

禁煙支援マニュアルの図



CD-ROM教材による自己学習教材の内容(1)

[学習内容−知識習得編]
1. 喫煙の健康影響(能動喫煙)
2. 喫煙の健康影響(受動喫煙)
3. ニコチンの依存性
4. 禁煙の効果
5. 禁煙サポートの理論と方法
6. 禁煙のためのノウハウ
7. ニコチン代替療法
8. 禁煙サポートの経済効果
9. 効果的な禁煙サポートの企画
10. 禁煙サポートの評価方法

CD-ROM教材による自己学習教材の内容の図



CD-ROM教材による自己学習教材の内容(2)

[学習内容−スキル習得編]
1. 喫煙ステージの特徴
2. 個別面接のロールプレイ
(1) 無関心期に対する指導事例
(2) 関心期に対する指導事例
(3) 準備期に対する指導事例
(4) フォローアップの指導事例
3. たばこ検査の測定方法と課題説明
(1) 呼気中の一酸化炭素濃度の測定
(2) 尿中ニコチン代謝産物の測定
4. ニコチン製剤の概要
(1) ニコチンパッチの使い方
(2) ニコチンガムの使い方

CD-ROM教材による自己学習教材の内容の図



研究概要

目的: 指導者用の自己学習用教材としてCD-ROM教材を開発し、その効果を明らかにすることとした。
対象: 平成17年度国立保健医療科学院の個別健康教育喫煙コースに参加した指導者83名を対象とした。
方法: 開発したCD-ROM教材の効果を明らかにするため、研修会の参加者に事前学習としてCD-ROM教材を用いた自己学習を実施した。学習の前後で自記式アンケートによる知識、態度、自信などのスコアの変化を明らかにした。



指導者トレーニングプログラムの流れ

指導者トレーニングプログラムの流れの図



知識スコアの変化

知識スコアの変化のグラフ

知識スコアは、○×正誤問題20問、多肢選択型36問、数値に関する正誤問題7問の合計63問の正答数で示した。



禁煙サポートに関する態度スコアの変化

  事前 自己
学習後
研修会後
喫煙習慣の本質はニコチン依存症 2.1 2.8*** 2.9***
禁煙サポートの重要性 2.3 2.8*** 2.9***,+
喫煙による健康影響 2.8 2.9 3.0*
禁煙の重要性 2.8 2.9 3.0**
禁煙サポートの費用対効果 0.0 0.9*** 0.9**
禁煙サポートによる医療費節減 2.2 2.4 2.6**
喫煙ステージにあった禁煙サポート 1.6 2.2*** 2.6***,+++
禁煙補助剤の効果 1.8 2.5*** 2.7***,+
禁煙サポートの研修の重要性 2.4 2.7 2.9***
事前との比較 * p<0.05 ** p<0.01 *** p<0.001
自己学習後との比較 + p<0.05 +++ p<0.001



禁煙サポートに関する自信スコアの変化

禁煙サポートに関する自信スコアの変化のグラフ



知識習得編に対する評価

知識習得編に対する評価のグラフ



スキル習得編に対する評価

スキル習得編に対する評価のグラフ



自己学習教材の効果

禁煙サポートに必要な知識、態度、自信のスコアは、事前に比べ自己学習後に増加し、研修会後まで維持された

事前に知識を習得して研修会に参加するため、研修会当日はロールプレイやグループワークなど禁煙サポートのスキルや実践に関わるプログラムを中心に運営することができ、効率がよかった。



指導者教育の充実

1. 禁煙治療、指導のためのトレーニングシステムを構築する
2. トレーニング資材の充実をはかる
 ・ 自己学習教材の開発(eラーニング、CD-ROM教材など)
3. 治療や指導技術の質を高める
 ・ 研修会の実施(スキルを中心にしたプログラム)
 ・ 禁煙治療の実地研修機関を設ける
4. トレーニング受講者の認定制度を設ける

ホーム > 政策について > 分野別の政策一覧 > 健康・医療 > 健康 > たばこと健康に関する情報ページ > 平成18年度たばこ・アルコール対策担当者講習会 > 禁煙支援マニュアル・ニコチン依存症管理料について

ページの先頭へ戻る