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脱水症

公開日:2016年7月26日 05時00分
更新日:2019年6月19日 14時44分

脱水症の症状

 「脱水症」とは、体内の水分が足りない状態のことをいいます。

 「脱水」になると、自覚症状としては口の渇きや体のだるさ、立ちくらみなどを訴えることが多いです。皮膚や口唇、舌の乾燥、皮膚の弾力性低下、微熱などが起こります。そのほかに食欲低下、脱力、意識障害、血圧低下、頻脈なども出現しやすいです。

 しかし実は、脱水に伴う症状がない、という方も少なくありません。軽度の脱水では症状が明らかになりにくいのも高齢者の特徴です。

脱水症の原因

 脱水は、「水分摂取量の減少」もしくは「水分喪失量の増加」、さらにはこの両方が同時に発生することで起こります。

 高齢者は特に「水分摂取量の減少」に気を付ける必要があります。口渇中枢の感受性低下によりのどが渇きにくくなり、水分補給が減少します。さらに、失禁(しっきん;おもらし)や夜間のトイレなどを気にして水分を取らず我慢したり、意欲低下などから水分摂取が思うようにできなくなり、最終的に脱水に傾く方もいます。

「水分喪失量の増加」は、一般的には下痢やおう吐、糖尿病性ケトアシドーシス、熱傷などの病気で起こります。高齢者の場合は、老化により基礎代謝量が減少し、代謝によって生成される水分が減少しています。特に筋肉・皮下組織などにおける備蓄水分量が減少しますので、特別な病気がなくても暑さなどの環境の変化などで容易に「脱水」になります。

脱水症の診断

 採血データによる脱水を示す所見(ヘマトクリット高値、尿素窒素/クレアチニン比が25以上、尿酸値7mg/dl以上など)だけでなく、身体所見にて、起立性低血圧・起立性の脈拍増加、腋窩(えきか;脇の下)・粘膜・皮膚・口腔内などの乾燥、眼球の陥没、意識障害(せん妄)などがあれば脱水症(体液欠乏)があると診断します。

 また、超音波検査で下大静脈の呼吸性変動が50%以上あることや、内頚静脈の推定中心静脈圧が低値であるということも、診断の助けになります。

脱水症の治療

 口からの水分補給が可能な方には、経口補水液などの投与を行います。飲食が困難なほどに衰弱している場合は、点滴で水分や電解質を補給します。

 血圧低下、意識障害などのショックの所見がある場合には、入院加療が必要となることがあります。

脱水症のケア・予防

 一般成人の場合、食事も含めて少なくとも一日に2.5リットル以上の水分を補給する必要があると言われています。しかし、高齢者の場合、飲み物だけで補うのは難しく、水分量の多い食事を心がけるのも重要です。 まとめると、以下のポイントが重要です。

  1. 嚥下機能が正常な方は、食事以外にもお茶の時間を設け、口渇感が無くても定期的な飲水を生活習慣に取り込み、普段から飲水を促しましょう。
  2. 夏季にはより脱水症の危険性が高くなるので、周囲の者が注意を払い、水分を補給しやすい環境を作ってあげましょう。
  3. 嚥下機能障害がある方の場合には、摂取するものにとろみを付けたりして、粘り気を増して水分補給を勧めましょう。
  4. 嚥下障害の強い方では、脱水症状の程度に応じて、早めに医療機関において点滴による水分補給が必要なので、早めに主治医に相談しましょう。

 入浴中や就寝中は想像以上に発汗しますので、入浴前後や就寝前、起床時などにも水分補給を勧めて下さい。ただし、より多くの水分量だけを確保させる目的で無作法に摂取させるのも危険です。特に心臓疾患や腎臓疾患を持ち合わせている方や、より高齢者では、若年者と比べて血行動態バランスを取るのにスムーズではなく時間がかかるため、急速な水分摂取はなるべく避け、より緩徐な水分摂取をお勧めします。

 下痢や嘔吐、多量の発汗では、多くの水分だけでなく電解質も失っています。したがって、水分だけでなく電解質も速やかに補給する必要がありますので、イオン飲料を摂取した方が望ましいです。

高齢者の脱水状態を発見するには

 高齢者では「何となく元気がない」「ぐったりしていて反応が鈍い」というよう場合にも脱水の可能性があります。また簡単に意識の混濁(脱水性せん妄)や失神を起こす場合も少なくありません。

 特に高齢になればなるほど、脱水状態の時間や程度が進むと重症化しやすいので、少しでも早期に脱水状態を発見することが必須です。そのためには、家族や介護者が可能な限り、「普段の食事摂取量」と「食事以外の飲水量」を慎重に観察してあげることが重要です。

 高齢者では以下の症状が複数認められる時には著明な水分不足が考えられますので注意が必要です。

  1. 舌・口腔内乾燥
  2. 皮膚の乾燥、皮膚の弾力性・緊張度低下
  3. 血圧低下・頻脈
  4. 易疲労感、脱力、食欲低下、意欲低下、立ちくらみ
  5. 意識障害・意識の鈍化 (「なんとなく元気がない」や「ぐったりしていて反応が鈍い」など)

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