食事指導の現場で活躍する管理栄養士さん必見のセミナー 食事指導・栄養管理アップデートセミナー 果物の価値と位置づけ セミナー報告

2016年9月に東京・札幌・福岡で行われたセミナーの報告です。全国の栄養士会様やご参加いただいた皆さんの協力もあって、とても有意義な時間でした。
残念ながらセミナーにご参加できなかった皆様、必見のコンテンツです!
前半は、女子栄養大学の上西一弘先生が食事摂取基準からみた果物の価値について。後半は、京都大学医学部附属病院の幣憲一郎先生が食品交換表 第7版の改定ポイントとあわせて果物の摂取に対する考え方をわかりやすく講義してくださいました。
セミナーからうまれた食事指導ツールもあります。最後までご覧ください!

  • 食事摂取基準からみる果物の活用と位置づけ
  • 「糖質管理に関しての注意点や重要性」~果物と関連して~

女子栄養大学 栄養生理学研究室 教授 上西 一弘先生

【講演内容】
食事摂取基準からみる果物の活用と位置づけ

  • 日本人の食事摂取基準について
  • 果物が提供する栄養価値について(1)
  • 果物が提供する栄養価値について(2)
  • 日本食品標準成分表2015(七訂)改訂で注目を集めるキウイ

日本人の食事摂取基準について

日本人の食事摂取基準2015年版では、以下のようなことを視野に入れた改訂が行われました。

1) 食事による不足や欠乏の予防
(例えば、カルシウムやビタミンD、若い女性における鉄など)
2) 過剰摂取による健康障害の予防
(例えば、サプリメントの誤った使用による特定栄養素の過剰摂取など)
3) 生活習慣病(高血圧・脂質異常症・高血糖・腎機能低下)の重症化予防
(例えば、高血圧予防のための食塩摂取量など)

諸外国の摂取基準は、上記の1)2)だけが定められているケースも多いが、日本では3)も含めて考えています。しかも、これまでは「生活習慣病の一次予防」だったものが、今回の改訂からは「生活習慣病の重症化予防」となっています。これにより、保健指導レベルの人にまで対象者が広がったことになります。

生活習慣病の中でも特に上記の4疾患がとりあげられたのは、「病気と食事の関係において、しっかりとしたエビデンスがあるもの。」というのが理由です。今後も、更なる研究がすすんでいけば、ここに取り上げられる疾患も増えてくることになります。

2015年版のポイント

生活習慣病の発症予防と共に重症化予防を加えたこと。
エネルギーについて、指標に「体格(BMI)」を採用したこと。
成人期を3つの区分に分け、目標とするBMIの範囲を提示。
肥満と共に高齢者の低栄養にも注意が必要。
生活習慣病の予防を目的とした目標量を充実。
ナトリウム(食塩相当量)=高血圧予防の観点から
成人男性8g/日、成人女性7g/日
その他、食物繊維とカリウムについても目標量を設定。

※食塩については、WHOは5g/日を強く推奨しています。しかし、日本人は食塩摂取が多い傾向にあります。そこで、目標量については、日本人の食塩摂取量とWHOが推奨する5gの中間値をとって設定しています。

尚、食事摂取基準について最も気にしていただくべき数値は耐容上限量です。
他方、目標量はあくまでも目標量なので、食塩摂取量は男性8g、女性7gに徐々にでも近づけていくようにましょう。
どうしても減塩が難しい場合は、ナトリウムを減らすのとあわせてカリウムを増やすなども工夫の仕方の1つです。

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上西一弘(うえにし かずひろ)先生 上西一弘(うえにし かずひろ)先生 プロフィール
女子栄養大学 栄養生理学研究室 教授
徳島大学医学部栄養学科卒業。骨粗鬆症学会、日本栄養・食糧学会評議員、日本栄養改善学会理事。
日本人の食事摂取基準2005年版、2010年版、2015年版策定ワーキングメンバー。骨粗鬆症の予防と治療ガイドライン作成委員会委員。著書に「栄養素の通になる」など多数。
  • 食事摂取基準からみる果物の活用と位置づけ
  • 「糖質管理に関しての注意点や重要性」~果物と関連して~