2016年5月8日に「糖尿病治療・食事指導の最前線」と題したセミナーでご講演いただく足立香代子先生にインタビューしてきました。取材当日も分刻みのスケジュールで精力的に活動されている足立先生から5月のセミナーの講演内容や、管理栄養士・栄養士の皆さまに期待していることなどをお伺いしました。管理栄養士・栄養士の皆様必見です!

足立先生のセミナーを楽しみにしている方たちに向けて、まずは、5月に大阪で行われるセミナーの講演内容についてさわりだけでも教えていただけますか?

今回のセミナーでは、昨今、ますます注目度が上がっている糖尿病治療における成人とシニアの指導方法などについてお話したいと思っています。これからの超高齢化社会に向けて、サルコペニアやフレイルが注目を集める中、糖尿病の患者は、「いつから高齢者か?」という見極めが大事になってきます。

男性の方の場合、「定年」が1つのきっかけにはなるかもしれませんね。この時期からを「シニアの準備期(予備軍)」ととらえて、糖尿病の治療においても「血糖値管理」を優先するか、「痩せないようにする」ことやひいては「元気で生きるために脳の機能や筋肉を維持すること」を優先するか、この見極めや優先順位付けが難しくなってきますね。
しかしながら、どのタイミングで、この見極めを行うかは、どのようなガイドラインや教本を見ても見つけられないのが現実です。米国糖尿病学会のガイドラインを見ると、「治療開始から10年経過した糖尿病患者には厳しくする必要はない」という主旨のことが書かれています。また、PFCバランスなどについても日本では「X対Y対Z」みたいなことをよく言いますが、米国のガイドラインでは「理想のバランスは無い(個人差である)」と言っています。つまりは、個人の生活状況や治療の進み方をふまえて、きちんとその人に適した栄養診断をして差し上げなければいけないということです。
患者さんの年齢が高くなるにつれて、複数の疾患が複雑に絡み合い食事指導においても何を優先するかが非常に大切になってきます。だからこそ、的確な栄養診断が必要になってくるのです。そして、栄養診断の結果から、更にその人の課題を抽出し、わかりやすい言葉で指導していくことが大切なのです。
このあたりのノウハウのほんの一部でも講演の中でお伝えできればと考えています。

ここから先は、5月に大阪で行われる
セミナーをお楽しみに!!

5月8日開催 大阪セミナーのお知らせ

さて、足立先生が後進の管理栄養士・栄養士に期待することがあれば教えてください。

この質問にお答えするためには、まずは栄養業務のことを紐解かなくてはなりません。誤解を恐れずに言えば、管理栄養士には独占業務といえるものがありません。医師も看護師も薬剤師も栄養の話を患者さんとすることができますね。
もっと言えば、お肉や魚、野菜、果物を販売している人でも栄養の話をすることもできてしまうのです。
そういった現状において、私たち管理栄養士が目指さなければいけないのは、他の職種にはできないワザを磨くことだと思っています。
このワザとは何かというと、「最新の栄養の知識や研究成果を患者・対象者に役立てることに他なりません。
「患者や対象者の生き様やADLに寄り添いつつ、最新の研究成果やエビデンス、知識を持って分かりやすい言葉で導いてあげるスキル」とも言えるかもしれません。
そのためには、国レベルでの研究やエビデンスも勿論ですが、企業の力も上手に使いこなしていけば良いのです。企業は様々な努力を重ねて多くの便利な商品を世の中に送り出しています。例えば、5月の講演でご一緒する味の素様もパルスイートシリーズなど信頼できる商品がたくさんありますね。
今はインターネットなどで多くの情報がとれるようになり、消費者の方も商品情報はよく知っています。特に糖尿病治療に役立つ商品は多いのですから、そのあたりの情報収集もプロとしては欠かせません。
そうして、あらゆるものを活用して患者さんの「元気に生きる時間」が長くなるように支えてあげてほしいと思います。

管理栄養士・栄養士は自分の言葉一つで患者さんを生かすこともダメにすることもできます。それくらい重い責任のある仕事。もっと言えば、これから高齢者が増えていく日本において生活習慣病の増加が問題視され、未病・予防に国の政策もシフトしていく中で、栄養士は国を救える仕事でもあるのです。
だからこそ、現状に満足せず、日進月歩の栄養知識をアップデイトして目の前の患者さんやひいては国を救える管理栄養士・栄養士になってほしいと思っています。

最後にそのような後進の管理栄養士の皆さまに向けて、足立先生が立ち上げた臨床栄養実践協会のお取り組みについて教えてください。

本協会は、対象者が抱える問題を栄養面から的確に整理し、臨床栄養の基礎を実践につなげるための協会として2014年1月に設立しました。
臨床栄養の現場で、多くの疾患を持つ患者さんの栄養的な問題を整理し、定義して、これをチーム内で共有して、患者さんの治療を良い方向に進めて行けるような管理栄養士の育成が必要だと考えているからです。
そのためには、講義と症例演習を繰り返し行っていく必要があると考えています。そこで、上記の考えに賛同してくださる人達と共に、東京・四国を皮切りに始めた研修会が、今では愛知・長野・仙台へと全国に広がりを見せています。
1年で10回以上行う研修会では、常に新しい知識を取りいれ、かつ目の前にある難しい症例を皆さんと一緒に解決していく方法を考えることを続けています。

管理栄養士として自分の知識や対応力がどのレベルにあるのか?を知り、更に次のステージにステップアップしていくために何が必要かを考え、それを継続していくことで無限にノウハウが蓄積されていく、そのような機会を提供できればと思います。
5月の講演会では、その一端を参加者の皆様にお見せすることで何かを感じとっていただければと思いますし、そこで、何かを感じた人は是非、臨床栄養実践協会の研修会にもご参加いただければと思います。

臨床栄養実践協会
5月8日開催 大阪セミナーのお知らせ
足立 香代子(あだち かよこ)先生 けんいちろう)先生 足立 香代子(あだち かよこ)先生
一般社団法人臨床栄養実践協会 理事長
せんぽ東京高輪病院 名誉栄養管理室長


管理栄養士の第一人者として、質の高い病院食の提供と、検査値に基づいた栄養診断による栄養指導法に定評がある。医療現場での栄養管理の功績により、社会保険学会賞・日本栄養改善学会賞・厚生労働大臣賞、教育賞等多数受賞。
過剰栄養に対する栄養指導や入院患者への栄養管理を実践し続ける一方、食事に経腸栄養、静脈栄養を含めたトータルコーディネートができる人材育成にあたっている。

日本臨床栄養学会理事、日本肥満治療学会理事、NPO法人PEGドクターズネットワーク理事、NPO法人創傷治癒センター理事。日本静脈経腸栄養学会名誉会員。日本臨床栄養協会、日本栄養改善学会など多数在籍。

主な著書
・足立香代子の実践栄養管理パーフェクトマスター(学研メディカル秀潤社) ・油はすごい。人気管理栄養士が教える、体を守る油のとり方(毎日新聞出版) ・日本一おいしい病院食をつくるチーム直伝!長生きごはん(宝島社)