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『むし養い』ですが。

第10回 ひじき中のヒ素について考える


横田 久美
管理栄養士。
大学院修了後、広告代理店を経て、現在は行政機関にて、食の安全に関するイベント等を担当。



 健康的なイメージを起こさせるひじき

 先日、「まごはやさしい」という名のついた惣菜を買って食べました。栄養士の皆さんや、食育に関心のある方なら一度は耳にしたことがあるでしょう、「まごはやさしい」。「ま」豆類、「ご」ごま、「は」わかめ海藻類、「や」野菜、「さ」魚・小魚、「し」しいたけきのこ類、「い」イモ類と言われています。これらの食品は、今の日本人に不足しがちな栄養素を確保できる、咀嚼回数が増えるなどメリットが様々に言われており、その惣菜屋もそんな「ヘルシーさ」をアピールするために、作ったメニューなのでしょう。サラダのような和え物のような惣菜でした。なんといっても、こんにゃくとひじきがごっそりと入っており、なかなか食べやすく、「ヘルシーだな〜」という気持ちにもさせてくれる一品でした。ひじきというと、健康的なイメージが浮かぶのは、私だけではないと思います。


 「日本産ひじきを食べないように」(FSA)

 2004年7月、英国食品規格庁(Food Standards Agency, FSA)は、「ひじきを食べるべきではない」と国民に対して勧告を出しました。実はカナダでは、これよりもさらに3年前の2001年10月に、同様の勧告を出しています。ひじきに、「無機ヒ素」が多く含まれているとFSAの調査で判明したためです。

 確かに、ひじき中にはヒ素が含まれています。特にヒ素の形態の中でも「無機ヒ素」の割合が多いとされています。どの海域で採られたひじきでもヒ素の濃度に大きな差はないという調査結果を述べる研究者もいるように、一般的にひじきには、ある一定濃度ヒ素が含まれることが「自然」であるともいえます。ヒ素というと、「和歌山カレー事件」などが記憶に新しいかと思いますが、古来から、ヒ素は毒物として扱われてきました。しかし、ひじきを食べたことで、ヒ素の急性中毒になるといったことは、これまでにも報告はありません。

 実は、この「無機ヒ素」は、国際的には発ガンリスクが指摘されていること、胎盤を通過する物質であり、妊婦の大量摂取による胎児への影響も考えられることなどから、摂取低減を推進する流れとなっています。しかし、「無機ヒ素」はひじきだけでなく、広く海産物に自然に含まれています。そういった海産物を多食するヒ素の摂取の多い民族や地域と発ガンの影響との関連付けは、まだ明確にはなっていないのも現状です。


 「水戻し」の重要性

 私たち日本人は、昔からひじきを始め、多様な海藻類を食べています。ミネラルも豊富で、ひじきの煮物などは、「お袋の味」のひとつでもあります。

 しかし、どんな食品にも100%の安全はありえないことからも、健康にいいというイメージがあるひじきも、また別の面から捉えれば、健康を損なう可能性があると言えます。食品の安全性を考える時、やはり「何かだけ」を多量に摂取することは、それだけリスクを伴うということになるのです。

 ひじきに関しては、FSAの勧告以降、様々な研究者が、その安全性に関して調査・研究をしています。調理・加工の中で行われる「水戻し」が十分にされていると、かなりの量の無機ヒ素を減らすことができるという調査もあります。最近、水戻しをせずに、乾燥したままのひじきを煮汁に入れ煮るといったレシピも見られますが、昔から伝承されてきた「少しの手間」を省かず、調理することも食品の安全性確保には、大切な知恵のひとつなのではないかと考えます。


 今回の、むし養い

 「タマゴチム」という料理を紹介します。これは、水と卵と葱だけというシンプルな韓国料理なのですが、ふわふわのスフレ状の卵焼きをスプーン(スッカラ)で取り、はふはふ言いながら食べます。「ぐいなら」(http://r.gnavi.co.jp/b068900/)梅雨時に、元気を出したい時にいつも行くお店です。


横田 久美(よこた くみ)

 管理栄養士。女子栄養大学、女子栄養大学大学院栄養学修士課程修了後、広告代理店に入社。 食品を中心に、広告や政府広報等のマーケティングやプランニングを担当。その後、行政機関の非常勤として、食品の安全性に関するリスクコミュニケーション部門で、各種イベントやDVD制作などに携わる。学生時代からの興味対象であり、修士論文のテーマでもあった「食情報と人との関わり」について、これからも考えていきたい。




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