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『むし養い』ですが。

第8回 究極のジレンマゲーム!?「クロスロード」


横田 久美
管理栄養士。
大学院修了後、広告代理店を経て、現在は行政機関にて、食の安全に関するイベント等を担当。



 イエスかノーか、人生は迷うことばかり

 「クロスロード」(商標登録済・チームクロスロード制作著作)というゲームをご存知でしょうか? これは、吉川肇子氏(慶應義塾大学商学部、社会心理学)、矢守克也氏(京都大学防災研究所、防災心理学)、網代剛氏(ゲームクリエーター)により制作されたゲーミングシュミレーションで、リスクコミュニケーションを学ぶツールとして開発されました。95年の阪神・淡路大震災時、神戸市職員が対応を迫られた難しい判断状況におかれた経験をもとに作られ、「ある場面で、与えられた立場に立ったとき、イエスかノーか決断する」というものです。

 ルールは、奇数人数のグループで、各人が出された問題(立場と場面)に対して一斉にイエスかノーかのカードを出し合い、多かった方のカードを出した人が、青いミニ座布団を獲得できるというもの。また、一人だけ違ったカードを挙げた人が金色のミニ座布団を獲得できます。獲得した座布団数を競うだけではなく、実は、その後「何故、その選択をしたのか」を全員が話すことが重要になっています。同じイエスのカードを出した人でも、その理由は全く違うということが往々にしてあります。このゲームを通して、「様々な問題を自らの問題として考える」「様々な価値観や意見を参加者同士で共有する」「立場によって多様な考え方があることを実感する」事ができるようになっているのです。

 例えば、『あなたは食料担当職員。被災から数時間。避難所には3000人が避難しているとの確かな情報が得られた。現時点で確保できた食料は2000食。以降の見通しは、今のところなし。まず、2000食を配る?配らない?』(神戸編1008)。さて、あなたならどうしますか?

 私達の生活の中にはたくさんの選択と、それに伴う迷いやジレンマが存在します。そして、その選択も、実は「正解」はないことの方が多いものです。そんなことをわいわいと楽しみながら、気付いていくのが、この「クロスロード」ゲームです。


 栄養指導にも活かせる「クロスロード」

 この「クロスロード」、防災だけでなく、様々なジャンルに展開されています。その中で、今回、「食の安全編」を作られた、順天堂大学医学部公衆衛生学教室助教 堀口逸子先生のお話を伺うことができました。

 堀口先生は、平成18年度からスタートした食品安全委員会が行っている「食品の安全性に関する地域の指導者育成講座」で、全国各地で「クロスロード(食の安全編)」を研修指導してこられています。「この講座には生産、流通、行政、消費者と、食に関わる人たちが集まっているのに、栄養士の参加がほとんどないのが気がかりです。一般の人からみたら、栄養士は食の専門家であり、食の安全についても知っていると思うのではないでしょうか? ですから、このような食の安全に関するリスクコミュニケーションの場にどんどんと参加し、他の食の関係者とも関わる機会を持って欲しいと思います。」(堀口先生)

 また、クロスロードの設問をアレンジすることで、栄養指導の場面で活かせると指摘されています。「“メタボ対策”でも、対象者自身の『気付き』に繋がるような仕組みがあるといいのでは。例えば、クロスロードの設問に、『あなたは、肥満で、ダイエットが必要なサラリーマン。今晩は歓送迎会があるので、妻に頼んで、軽めの弁当を作ってもらった。しかし、上司から、天ぷら屋にランチに行こうと言われた。さあ、あなたなら、ランチに行くか、行かないか』等と作り、対象者のグループワークにしてみてはどうでしょう。栄養指導を受ける対象者はたくさんのジレンマや迷いを日々抱えています。栄養士自身がそういったジレンマの存在に気付き、共感できることも、大切なコミュニケーションではないでしょうか。」(堀口先生)

 ぜひ、一度、「クロスロード」をあなた自身が体験してみてはいかがでしょうか。
 堀口逸子先生の連絡先:電話 03-5802-1049


横田 久美(よこた くみ)

 管理栄養士。女子栄養大学、女子栄養大学大学院栄養学修士課程修了後、広告代理店に入社。 食品を中心に、広告や政府広報等のマーケティングやプランニングを担当。その後、行政機関の非常勤として、食品の安全性に関するリスクコミュニケーション部門で、各種イベントやDVD制作などに携わる。学生時代からの興味対象であり、修士論文のテーマでもあった「食情報と人との関わり」について、これからも考えていきたい。




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