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栄養教育の現場から

私が考える「理想の保健指導・栄養教育(3)」


新出 真理
ヘルスサポート研究会カナン代表 管理栄養士、産業カウンセラー、東京医科大看護専門学校等非常勤講師


 3回目の今回も自己紹介を兼ねて、理想の保健指導・栄養教育を考えてみます。

 栄養や料理にあまり興味がなく、栄養士の仕事すらよくわからなかった私ですが、学ぶうちに栄養士に予防の仕事ができることを知り、徐々に栄養指導の仕事に興味を持つようになりました。当時は、栄養指導は病院に行って給食経験を数年してからでないとできないものだと思っていました。ところが、たまたまゼミの先輩が勤めている栄養指導をする職場で欠員補充の募集があり、卒業が目前に迫った頃、そこに就職することになりました。

 その財団の私のいたセクションは、企業や健保組合の健診後の栄養指導をメインにする、まさに、今でいう特定保健指導を行う職場でした。健診結果をもとに対象者の食生活を調査・分析して、アドバイスをする。多くは文書指導でしたが、対面型の個人指導、研修会も多く行いました。健保等のニーズや対象者の特徴に合わせて教材や指導マニュアルを作り、登録の在宅栄養士さんに伝えて、一緒に指導をする。またその結果をまとめて報告書を作成するのが仕事だったのですが、これらは大学の卒研で学んだことがそのまま役に立ちました。

 その中で、多くの企業や健保組合の健康づくり担当者の方や対象者の方からは、社会人としても保健医療従事者としても、本当に多くのことを教えていただきました。

 思い出深い方の一人に秋田さん(仮名・40代男性)がいます。ある健保組合の栄養指導をして2年目のある日、秋田さんは前に座るなりニコニコして「私ね、体重10kgも減ったんですよ」と言われました。思わず「良かったですね」と言うと、「いやあ、ありがとうございました。女房も喜んでるんですよ」と言うのです。私は覚えていなかったのですが、前年に私が指導をしたそうなのです。でも秋田さんいわく、「正直なところ、若い女の子がどんなことを言うのか、まあ一応きいてやるか、と思ってたんだよね。そしたら、カロリーのことで色々、勘違いしていたってわかって・・・。で、気をつけてみたら、本当に体重が減るんだよね。やっぱりプロの話は聞いてみるもんだねえって女房と話してね。まだあと10kgは減らして定健の結果も良くしたいけど、このまま、食事に気をつけたり、あとはアルコールを減らせば、何とかなりそうな感じがしますよ」。

 私にとっては、色々な意味で新鮮な感想でした(そうか、私の栄養指導を「聞いてあげる」っていうスタンスもありだったのね)。それは嫌というより「聞いていただいて、ありがとう」という感じに近いものでした。その後の指導の中でも、対象者の中には自分のためというより、栄養士が一生懸命やっているから聞いてやるかという態度で来ている方も少なくないこと、それをこちらが受け止めると相手の主体性が表れてくる場合が多いことにも気づきました。

 同時に、自分でどんどん気づいて決めていくなんてすごい!とも思いました。その頃に私がした栄養指導といえば、多分、マニュアルの最低限のレベルをクリアする程度だったと思いますが、それでも効果を出すほどの対象者の学ぶ力を生かしたいとも感じました。

 私の考える「理想の保健指導・栄養教育」の要素の一つ、「相手を大切にする」ということには、その表れとして、相手の主体性を育むアプローチをすることがあります。そのために、面談ではまずは相手の考えや思いを受け止めることから始めるようにしています。

p.s.皆さんが新人の頃、印象深いことってどんなことがありますか?


新出 真理(しんで まり)

女子栄養大学卒業後、管理栄養士として電設健保健診センター等で保健指導をしながらカウンセラー資格取得。筑波大学大学院修士課程健康教育学専攻修了と同時に開業。専門は健康教育学・栄養教育学。現在ヘルスサポート研究会カナン代表として、栄養相談、健保連巡回健保コンサルタントや大学等の非常勤講師などを務める。著書に「いちばんわかりやすい管理栄養士国家試験合格テキスト」(誠美堂出版)など。




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