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大学病院に勤める管理栄養士の日常

パフォーマンス


西村 欣也
筑波大学附属病院 栄養管理室勤務。栄養管理室長兼、病態栄養部副部長を務める。


 先日博多出張の折、タクシー運転手にすすめられるまま、博多名物屋台へ。味の評判もさることながら、魅力は屋台の大将の頑固ながらも人間らしい人情味あふれる人柄とトレードマークの赤い鉢巻。(ちなみに博多では、その色に大変重要な意味があり、鉢巻の色で博多地区では上下関係が識別されるのだとか)訪れたのはその大将と奥さんが営むおしどり屋台。

「・・らっしゃい、なんにするね? おすすめは、薩摩焼酎だよ! それからドテ煮、明太子入りだし巻き、おでん、焼き鳥・・・」

すすめられるままに、栄養管理のプロ8人の面々の内臓はオーバーワークへまっしぐら。

「およそHACCP管理にはちょっと遠いかもね・・でも胃の安全保障はされているだろうし・・・」

などと、わずかに職業病の症状を見せながらも満喫!! 狭い屋台に寡黙な人、にぎやかな人、いろんな人たちが隣合わせ、裸電球の心地よいあかりの下でほろ酔いになった1時間余り。我が家に控えし大蔵大臣の怖さも忘れ、呪縛から解放されたように博多ラーメンのとんこつ味で宴会を仕上げると時間も24時。あわててタクシーに乗り込みホテルの部屋に戻った。

 屋台の数時間は大将の新しい物好きで先入観なく接する博多っ子気質に惚れ、低い位置からの親しみ込めた軽快な話術に引き込まれ、気が付けば博多の伝統や風土についてのチョットした物知りになった気分に。名産の博多明太子のようにピリっとしたメリハリのきいた語りかけに、すっかりのめり込んでしまった。

 大将の屋台で繰り広げられた話題の原点は、大将自らの熟練した観察力で評価したもの。その魅力は、まさにコーチングそのもの! 免許皆伝の腕前だ。なるほどこれだよ、歓心関心感心!! 8人の栄養管理のプロが改めて異口同音に語り合う。普段我々に必要な動態統計より的確な調査分析? 食欲に基づく屋台の選択理論?? 季節変動における食行動変化??? 社会情勢を別の角度から見た最先端話題????

 普段の栄養指導に、博多屋台相談を導入してはどうだろうか(名付けて屋台指導・NEW栄養指導コンテンツ)。日々実行するセルフケア行動の動機付けとなり、きっと世の中の会社帰りのメタボなお父さん方には効果てきめん、このアプローチ法はきっとわかりやすい動機付けとなるに違いない。グ〜!! などと焼酎片手に親指たてて宴は盛り上がった。栄養士の相談指導業務で本当に心がけなければならないものは、この距離この角度この話術なのだろう。
  • 目にはエネルギーの具体的な大きさが形でわかるように
  • 耳には危険信号の具体的な大きさを身近な事例で
  • 肌にはスキンシップで安心感・親近感を感じるように
  • 舌には五感を感じるように
 我々には、健康が大切と思いながらも仕事や経済、家族を優先してしまう現状がある。

 最近は、特に栄養過剰問題にばかり焦点がおかれている。対象者(患者)の生活習慣を聞き取って食事状況を評価し、栄養必要量にも幅をもって対応しなければ、 慢性的な問題に対応できない。加えて我々は、短時間に打ち解けることになれていない人、他人の目や自分の立場を意識しすぎる人などにも、対応しなければならない。そして、このような人には大変なエネルギーを使うことになる。特に集団指導では、他の方に注意をしつつ、その方の意識を途切れさせないように心がけなくてはならない。

 心の栄養となるような話題を一緒に煮込んだような「健康屋台商売」が果たして出来ているだろうか? 屋台商売の場合、夏は暑く冬は寒い。大きくは気候とその場の雰囲気次第で売り上げが決まるという。心をほぐす雰囲気が、その日の売り上げを大きく左右するのだ。

 なるほど、目指すべきはいかにもうまく患者(顧客)の話を引き出す聞き上手、話させ上手、たずね上手であること。これが我々栄養士にもっとも必要なことなのかもしれない。突然飛び込んだ屋台で思いがけず得た大きな教訓を胸に、博多を後にした。




西村 欣也 (にしむら きんや)

佐伯栄養専門学校卒業。三重県四日市市立病院、市立高等看護学校講師、給食事業会社、富山医科薬科大学付属病院を経て、2005年より筑波大学附属病院 栄養管理室へ勤務。栄養管理室長兼、病態栄養部副部長として現在に至る。




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