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シネマの食卓から。 日本の農を知る映画 ![]()
■もう一歩深く知りたい 先月、雑誌の取材で東京都練馬区の「体験農園」をおとずれました。その農園では、単に農地を借りるだけでなく農業者から野菜作りのノウハウを教えてもらえるため、初心者でも気軽に野菜作りができます。そのため、住民に大変な人気で、13園ある農園はどれも、毎年約3倍の応募があるそうです(くわしくは『栄養と料理』6月号で紹介しています)。ところで、12年目になるその農園ですが、園主によれば、近年参加者の属性に変化がおきているそうです。従来の中高年のかたのみでなく、小さな子どもがいる家族や食に関心を持つ若い人(栄養士さんもいました)の数が年々増加。動機を訪ねると「食の安全に関心を持つうちに、自分の手で食べ物を作ってみたいと思ったんです」という声が口々にかえってきました。食の安全・安心を一方的に求めるだけではなく、自分の手で作り、もう一歩深く理解したい、そう思う人が増えつつあるのを感じました。 ■伝えたい農村の思い 『いのち耕す人々』(日本 2006年) 前置きが長くなりましたが、今回紹介する作品は『いのち耕す人々』というドキュメンタリー映画です。山形県高畠町を舞台に、四季折々の農の営みや、その土地に有機農業や環境保全型農業が根付くまでの30年以上にわたる軌跡が描かれます。春の土作りから秋の収穫まで、美しい田園風景とともに描かれるのは、雑草や虫、その他あらゆる自然と闘う農業の厳しさです。田んぼに放した合鴨がカラスに襲われたり、虫食いだらけのキャベツの青虫を手で一匹ずつ殺したり、ヒョウで一夜のうちにリンゴが傷ものになったり……。そしてそれらの災難に襲われても、「よし、次!」とすぐに気持ちを切り替え、試行錯誤を繰り返す人々の力強さ。「安全な食を」と言うことはたやすいですが、それを実現するには、いかに大変で、熱い思いに支えられているかが、淡々と語られる日々の中から浮かび上がってきます。 高畠町の有機農業のリーダーは、詩人でもある星寛治さん。随所に織り込まれた彼の詩が生産者の胸に秘めた思いをいっそう際だたせます。 この映画のクライマックスは、今から20年前にぶつかった農薬散布の問題を、生産者がいかに乗り越えていったかというところ。今や有機農業で全国的に有名な高畠町ですが、約30年前に有機農業研究会を立ち上げたときはわずか38名、周囲の農家からは村八分に近い状態でした。それでも都市の消費者グループと直接つながることで、育んできた矢先、農薬の空中散布が開始されます。無農薬の畑も、汚染をまぬがれず、中止を求めますが、村では圧倒的少数派の研究会の意見は通りません。このままでは消費者は離れ、研究会は崩壊してしまう。 考え抜いた末、大きな決断をします。完全な無農薬ではなく、減農薬も認める方針に変え、村人に研究会への参加を呼びかけたのです。すると「それならできるかも」と賛同者が増えたのです。運動が点から面へと広がったことで空中散布は中止。今は村の農家の半数である1000戸が、有機農業や環境保全型農業に取り組むまでに広がったのです。信念は曲げず、しかし完璧な理想を目指すよりも、多数が共感できる方法を考え、地域に根付き、広がることを選択した。この決断のくだりは見ていて鳥肌が立ちました。そして、とても深い示唆が込められているように感じたのです。 『東京にいると頭でっかちになって理想ばかりを生産者に求めてしまうんですよね……』 映画『いのち耕す人々』の中で、援農にきた消費者が農家の方に語った印象的なセリフです。 食の安全・安心を、広い視野で、より現実的に考えていくためには、都市部に住む私たちも、生産の現場を、知っていくことが大切でしょう。農村からのメッセージが詰まった貴重な映画です。 ★実は、自主上映が中心だったこの映画が、6月28日から、東京都《ポレポレ東中野》で公開されることになりました。そこで今回紹介させていただきました(関東以外の方には恐縮なのですが……) 詳しくはコチラ→ http://www.sakuraeiga.com/inochi/news.htm ※こちらの上映は終了しました。今後の上映情報や自主上映に関する情報はホームページをご参考にしてください。
■プチプチ農(おまけ) ところで、先日、山芋の芽の部分を切って、試しに植木鉢に植えてみました。すると芽が出て、驚くべき生命力で日に日に伸びて行くではありませんか! そうなると次々に出てくる、諸問題。水やり、虫とり、支柱立て……。あわてて対応しつつも、それがちょっと楽しい。共働きで遠距離結婚中のわが家では、憧れつつも、なかなか畑は持てません。とりあえずはこんなプチプチ農で、体験中です。
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