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シネマの食卓から 。 料理が愛を伝える力 ![]()
■手作り派?買う派? バレンタイン、皆さんはどんな思い出がありますか?昨年、『栄養と料理』の記事で、初心者でも作れるチョコレート菓子を紹介しました。もちろん、健康を考えて甘さは控えめです。私が学生時代(十数年前?)は本命は手作り、買ったものは義理、というのが定番でした。しかし、昨今は国内外のパティシエによるおいしい高級チョコも続々と登場。本命でも買う派も増えているようですね。とはいえ映画の世界では、愛を伝えるのは、圧倒的に“手作り派”が優勢です。今回は、バレンタインにちなみ、手料理の愛を伝える力を描いた映画を紹介します。 ■『初恋の来た道』 まず思い浮かぶのが、『初恋の来た道』(中国 2000年)。今や国際的大女優チャン・ツイイーのデビュー作。今から50年ほど前の中国北部の寒村に住む、少女の一途な初恋が輝くばかりの愛くるしさ演じられています。自由恋愛が認められなかったこの時代、言葉も満足に交わせない2人をむすびつけたのが手料理でした。18歳の少女ディ(チャン・ツイー)は都会からやってきた若い教師に一目で恋をします。先生になんとか想いを伝えたいディは学校の建築にたずさわる村人へのお弁当作りの折り、少ない材料で精一杯のごちそうを作ります。1日目はねぎのお焼き、2日目は粟ご飯と炒り卵、3日目はきのこ餃子とメニューもかえて。数多いお弁当の中、はたして先生が自分のものを選んだかはわからないままでしたが……。 さらに、先生を家に招いて手料理をごちそうするチャンスが訪れます。土の匂いがする簡素な台所で、大なべに湧かした湯気に包まれ、華奢な少女が大包丁で手際よく青菜やピーマンを切り、中華鍋でいため、料理を仕上げていきます。無心で料理を作るその姿は美しくて思わず引き込まれます。そして料理を食べた先生も、ディの純粋な心を感じとり、惹かれていくのです。その直後に、先生はとある事情で強制的に都会へ帰されてしまい、2人は離ればなれになるのですが、このただ一度の食卓が2人の間に強い絆を結んでいて、激動の時代の大変な障害を乗り越える原動力になっていくのです。 ■『赤い薔薇ソースの伝説』 つぎに紹介するのが、よりダイレクトに料理の力を描いた『赤い薔薇ソースの伝説』(1992年 メキシコ)。メキシコの裕福な農場の末娘に産まれ、古い家のしきたりにしばられていた女性が、精神的に自立していく様子を描いています。さらに、半分以上が食のシーンではないかと思うくらい、メキシコの台所や伝統料理が登場し、料理好きの好奇心をくすぐる映画でもあります。生涯結婚せずに、母親の面倒を見ることを生まれながらに定められていた主人公のティタは、子どものころから料理が好きで、料理が自己を表現するすべとなり、彼女の人生を支え、切り開く武器ともなっていきます。理不尽な掟のせいで自分の恋人が姉と結婚させられ、一つ屋根の下に暮らすという残酷な状況に置かれたときもそうでした。一家の台所を担っていたティタは、料理を通じて恋人に想いを伝えて行くのです。ある日恋人から送られた薔薇の花びらをソースにして、ティタが全身全霊をこめて作った、ウズラの料理。これを食べた恋人は、まるでティタ自身が体内に入ってくるような感動を覚え、2人は、料理を通して心と体がつながっていくのです。 この映画のコピーは「あなたは毎日私を食べる」。表現は刺激的ですが、考えてみれば、料理には、作り手の心や感性や技術、生きてきた歴史までも反映されるものです。食べ手はそれらを無意識の内にも受け取ることになるわけですから、そう考えると、バレンタインに手作りチョコを贈るというのは、もとはお菓子会社の宣伝から始まった日本独自の行事とはいえ、理にかなったものといえそうです。 ■本能的に知っている? その他にも、チョコレート職人の女性がチョコによって、人々に生きる力を与え、そして自らの恋愛も成就させる『ショコラ』(アメリカ・イギリス 2000年)や、パイ作りの名人の女性が手作りパイを通して男性と恋に落ち、同時にみじめな自分の人生を変える力を得ていく『ウエイトレス』(アメリカ 2007年)などがあります。これらの主人公が、大切な人のために料理を作るその姿は、生命力に溢れていて、美しく、実に魅力的です。今の日本でも、昨年の某調査によれば、小、中、高校生の8割が本命には手作りするという結果が。年齢が上がるとまた少し違うのかもしれませんが、それでも、こんなに素敵なチョコレート菓子が店頭に並んだ現代でも、本命=手作りという図式は健在のようです。 おいしい手作りのチョコを贈ればうまくいくというほど、恋は甘いものではありません。しかし、真に心をこめて作った料理に力がこもるのは確かなはず。そして、女性は、本能的にそのことを知っているような気がします。これらの映画は、その力を改めて呼び覚ましてくれそうです。
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