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小児・母子の分野から

心に残った伝統的行事食


井部 奈生子
管理栄養士、健康咀嚼指導士。白梅学園短期大学講師、東横学園女子短期大学講師。


 最近、行事食をいつ食べましたか?

 日本では、古くから祭りや行事が行われてきました。これらは日本の時代や季節に密接に関わりながら、日常生活に深く根ざしています。先人たちは供物や特別な食物を用意して祭りや行事を祝ってきました。

 人の一生の儀礼には色々ありますが、子どもの健やかな成長を願って祝う儀礼として、3月3日の雛祭り、5月5日の端午の節句等があります。1歳の誕生日には、大きな丸餅を背中に背負わせたり、子どもに踏ませたりする風習もあります。餅には霊力が込められるという考えがあるためで、これらは子どもに生命力を与えることを願っての儀礼とされています。

 食事に関わる儀礼で、生後100日目に行われる「お喰い初め」があります。「百日(ももか)」または「喰い初め」「箸初め」ともいわれ、子どもが一生食べることに困らないことを願って祝います。これは乳汁以外の食べ物を食べ始める儀式で、幼児用の食器をのせた膳に赤飯や魚、吸い物を盛り、母親が子供を抱いて初めて箸を使って食べさせます(まねをする)。

 先日、私も息子の「お喰い初め」をしました。縫物や掃除が苦手な私は、「食事だけは手作りでおいしいものを食べさせてあげたいな」と妊娠した時から考えていました。お宮参りの際に「お喰い初めに」と茶碗をいただいたのがきっかけとなり、初めて息子のために食事作りをすることにしました。お祝いに集まってくれた親族にも振舞うため、久しぶりに大人数の食事の用意をしました。何を作ろうかと悩みましたが、祝いの食事なので鯛を焼き、赤飯を炊きました。

 日本の祝いの儀礼には鯛や赤飯がよく登場します。日本の食にかかせない魚介類の中で、特に鯛が祝いに用いられるのは、「めでたい」に通じるのみでなく、姿や美しい赤色、淡泊な味などが好まれるからのようです。また、赤飯は赤い色が邪気を払うとされ、今回の祝いの食事で、自分の結婚式で食べた赤飯のことを思い出しました。これから先、赤飯を食べる機会があるたびにこれらの儀礼を思い出すのだろうなと嬉しく思いました。

 生後100日目ですから、もちろん息子は食べることはできません。ですから食べるまねごとをし、祝いの料理は集まった親戚で食べました。「作り過ぎてしまったかな」と思いましたが、皆が「おいしい」と言ってくれました。鯛だけは、遠慮して誰も箸をつけなかったため、その日の夕食で鯛飯にしました。息子はスプーンでりんごの果汁を(湯ざましで3倍に薄めたもの)飲みました。りんご果汁の甘い味は気に入った様子で、とびきりの笑顔でした。

 食習慣の乱れが目立つ今日こそ、乳幼児期から家族で様々な食卓での経験をすることが大切になります。今回の儀礼のように心に残る楽しい食事を体験することが、食に興味を持たせるきっかけとなるのではないかと感じました。

 核家族化で、伝統的な年中行事は急速に失われる傾向がみられます。年中行事や節目の儀礼を見直し、次世代へ伝え、食事を大切にすることを子ども達に体験的に教えていくことが必要なのではないか。そしてそこから行事の由来を理解するとともに、豊かな日本の季節感を育んでほしいと考えたひとコマでした。(栄養士として:無理なく、ライフスタイルに合った行事食の献立を提案していけたら、と考えました。)



井部 奈生子(いべ なおこ)

管理栄養士、健康咀嚼指導士。国際学院埼玉短期大学専攻科食物栄養専攻卒業後、女子栄養大学大学院栄養学研究科修士課程終了。戸板女子短期大学給食管理研究室助手を経て現在は、白梅学園短期大学、東横学園女子短期大学にて講師を勤める。研究テーマ・論文等は「新生児マス・スクリーニングで発見されたフェニルケトン尿症の生活状況に関する研究」、現在の研究テーマは「食品のテクスチャーとその官能評価について」




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