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小児・母子の分野から

食物との出会い


井部 奈生子
管理栄養士、健康咀嚼指導士。白梅学園短期大学講師、東横学園女子短期大学講師。


 水分を多く含む乳汁(母乳や育児用ミルク)は、赤ちゃんが成長していくにつれ、発育に必要なたんぱく質や鉄分などの栄養分が不足してきます。そこで食の自立をしていくためのプロセスが必要となり、「離乳」を進めていくことになります。離乳は食物をとりこむ力や消化能力の発達に併せて、食物のかたさや大きさを徐々に変化させていきます。形のある食物をかみつぶすことができるようになり、栄養素の大部分が母乳または育児用ミルク以外の食物からとれるようになると離乳が完了し、幼児食へと移行していきます。

 食べる分量も増えて、かむことに慣れていくこの時期は、素材の持ち味を生かした食事を心がけ、素材がもつ本来の味を教えてあげることが大切です。 四季があり、海と山の幸に恵まれた日本人は、古くから多くの食材を調理して食べてきました。これからの季節は、初夏に向けて日を追うごとに野菜売り場が変わる楽しい季節です。近年は、品種改良やハウス栽培技術により一年中手に入る野菜も多くなりましたが、その中にも、春キャベツ、新たまねぎ、新じゃがいもなど春ならではのフレッシュな味を楽しめるものがあり、食卓を彩ってくれます。

 私たち栄養士は支援者として、日本の豊かな四季の恵みである旬の味を積極的にとり入れ、季節ごとに出回る食材を上手に活用する働きかけが必要です。特に低自給率で大部分の食糧を輸入に頼っている現状を深刻に受け止め、私たちの周りにある食材を大切にすることも教えなくてはなりません。

 食材は、それぞれに固有のテクスチャーがあります。テクスチャーは、かたさ、粘り、なめらかさなどのように、主として食べ物を咀嚼した際に口腔内の皮膚や筋肉で感じ取られる刺激です。またこのほかに手や指で触った時の刺激や、目で見たときの視覚的刺激を含める場合もあります。私たちは、咀嚼によってそれらを感じ取り、言葉で表現することによって情報を他者へ伝達しています。テクスチャーはおいしさの重要な構成要素であり、私たちはこのテクスチャーを多彩な言葉で表現することができるのです。

 例えばじゃがいもをサラダ油で揚げたスティックフライを説明する際、サクッとしたスティックフライ、カリッとしたスティックフライと説明すると、「サクッ」や「カリッ」というテクスチャー用語を使用する事で、おいしいスティクフライがイメージできると思います。反対に油っぽいスティックフライ、しなしなしたスティックフライとすると、「油っぽい」や「しなしな」という表現のために、食欲をそそるイメージがわいてこないと思います。テクスチャー表現は、作る側と食べる側の情報伝達の重要な道具でもあるのです。特に、日本語テクスチャー表現の最大の特徴は、数が多いことです。食物の話をすることが多い私たち栄養士は、テクスチャー用語を適切に使用し、興味がわくような表現豊かな話をすることで、相手により具体的に伝えることが可能になります。

 子どもは離乳が進み完了の時期になってくると、すりつぶす力が強くなり食べられるものが大人に近づくので、様々な食感を体験します。食事中も意思がはっきりでてきて、思いどおりにいかないこともあります。大切な時期であるからこそ、優しい笑顔と一緒にテクスチャー用語を利用して、食べることが楽しいことだと教えてあげてほしいと思います。


井部 奈生子(いべ なおこ)

管理栄養士、健康咀嚼指導士。国際学院埼玉短期大学専攻科食物栄養専攻卒業後、女子栄養大学大学院栄養学研究科修士課程終了。戸板女子短期大学給食管理研究室助手を経て現在は、白梅学園短期大学、東横学園女子短期大学にて講師を勤める。研究テーマ・論文等は「新生児マス・スクリーニングで発見されたフェニルケトン尿症の生活状況に関する研究」、現在の研究テーマは「食品のテクスチャーとその官能評価について」




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