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小児・母子の分野から

安全・安心な食事の提供


井部 奈生子
管理栄養士、健康咀嚼指導士。白梅学園短期大学講師、東横学園女子短期大学講師。


 近年、私たちを取り巻く食環境は、急激に変化を遂げています。食の欧米化や生活様式の変化だけに留まらず、何時でも何処ででも手に入る旬を無視した食物、栄養補助食品の登場等、食文化がめまぐるしく変化する毎日です。したがって、消費者は食を賢く選ぶ知識をもち、時代に合った上手な食べ方を身につけていく必要があります。このような時代にあった食を提供し、指導する立場にある栄養士・管理栄養士には複雑な食品流通の機構を知り、食品鑑別の知識・能力を持つことが求められています。さらに、農薬や添加物の使用基準、遺伝子組み換え食物や期限表示をはじめ様々な制度が制定されており、これらも十分に理解することが必要です。

 特に、子どもの食環境を考えたとき、食物アレルギーが大きな社会問題となっています。現在、卵、乳、小麦、そば、落花生の5品目が「特定原材料」として表示が義務づけられています。また、「特定原材料に準ずるもの」として20品目についても表示が勧められています。食物アレルギーの発症は食習慣と密接に関係があるため「特定原材料に準ずるもの」では、諸外国のアレルギーに比べ水産物アレルギーが多い特徴があげられます。

 学生の頃、保育所を訪問した際、園長先生とのお話の中で、食物アレルギーを持つ子どもが多いのに驚いた経験があります。先生によると、食物アレルギーを持つ子に対しては、園長・担任・栄養士・調理員が話し合い、一人一人に対応した代替食品を使用した給食を用意し、対応をしているとのことでした。また、代替給食の用意が困難な場合は、家庭からメニューの替わりになるものを用意してもらうそうです。しかし、給食が別メニューであるため、他の子どもの給食をほしがったり、自分だけどうして別メニューなのか不思議に思ったりして集団生活に適応しなくなるという問題が起きることもあるので、心のケアも必要であるとのことでした。後日そのことを友人に話すと、友人も食物アレルギーがひどく、給食について心配した両親が給食がなくお弁当持参の学校を選んで進学させたと聞き、生活の中に占める食事の影響を考えさせられました。「食物アレルギー」は子どもの食環境だけでなく学校生活までに影響してくるのです。

 一方、アレルギーが原因で食べられない食品がある子どもがいる反面、「好きなものしか食べない」という子が増えていることも確かです。本来、安全・安心な食べ物は信頼できる親や家族に見守られ食べている姿を真似しながら学習し、体得していくものです。そして子どもから大人へと成長していく過程で年齢やTPOに合わせて食域を広げていき、「食」を学んでいくのだと思います。食べたくても食べられないものがあれば、そのことがきっかけとなり食を考える時間が自然と生まれます。好きなものしか食べない子も、きっかけ作りをしてあげることによって心に変化があらわれるのではないでしょうか。例えば、日本語の「いただきます」は、「動物や植物の命をいただきます」という意味があります。意味を教えることにより「感謝」の気持ちが理解されれば、心をはぐくむことに通じます。「食」に携わるものとして、食を提供するだけでなく、食の心をも提供したいと思っています。


井部 奈生子(いべ なおこ)

管理栄養士、健康咀嚼指導士。国際学院埼玉短期大学専攻科食物栄養専攻卒業後、女子栄養大学大学院栄養学研究科修士課程終了。戸板女子短期大学給食管理研究室助手を経て現在は、白梅学園短期大学、東横学園女子短期大学にて講師を勤める。研究テーマ・論文等は「新生児マス・スクリーニングで発見されたフェニルケトン尿症の生活状況に関する研究」、現在の研究テーマは「食品のテクスチャーとその官能評価について」




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