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小児・母子の分野から

私の食育体験


井部 奈生子
管理栄養士、健康咀嚼指導士。白梅学園短期大学講師、東横学園女子短期大学講師。


 食の原点は家庭であり、親の食に対する価値観は子どもに大きく影響します。現在、様々な観点から「食育」という言葉が使われるようになりました。「食育」という言葉は、明治31(1898)年、石塚左玄が「通俗食物養生法」という本のなかで、「今日、学童を持つ人は、体育も智育も才育もすべて食育にあると認識すべき」と記したことに始まるとされています。国は「食育基本法」を制定し、「食育」を重要課題として注力しています。そのような中、自分達自身が「食育」を体験し、その効果を確かめ、技術的にも日常から工夫を重ねていくことが、栄養士・管理栄養士に求められていると感じています。

 食に関わる仕事をする中で強く感じていること、これまで仕事を通して関わった人や親から教わったこと、自分が親としてこれから子どもに食をどう伝えていくか考えたこと、失敗談などをコラムを通じてお伝えできたらと思っています。

 今回は私の「食」との出会いについてお話しします。料理好きの母に育てられた私は、小さな頃から食いしん坊でした。私の小学校1年生のクリスマスプレゼントは、当時流行していたキャラクターのクッキー作りに使う道具のセットでした。そのクッキー型や、泡立て器、ゴムべらなどが今思い返すと初めての自分の調理器具となりました。母のお手伝いをしながら初めて作ったクッキーの味は今でも忘れられません。母も、料理好きの祖母から料理を教えてもらったそうで、今でも祖母が使っていた調理器具を使っています。一人暮らしを始めるまで、母の手料理を家族で囲んで毎日楽しく食事をしていたことを思い出します。行事食も母が手作りしてくれていましたが、印象に残っているのは毎年待ちどおしかった節分です。豆まきももちろんしますが、豆と一緒にキャンデー、チョコレート、マシュマロなど小さな袋に入ったお菓子を一緒に母がまいてくれて、兄弟3人で競争しながら拾います。普段は、母の手作りのおやつを食べていた私たちにとって節分は色々な種類の甘い市販菓子を食べられる貴重な日だったのです。「いっぺんに食べてしまってもいいけれど、一週間分のお菓子の量だから自分で考えて食べなさい」と言われ、どれをいつ食べるかウキウキ考えながらそのお菓子を少しずつ一週間分に分けて食べました。母は子ども達に自分で考えて食べるということを学ばせたかったのだと思います。

 子ども時代の食は心身の発達に最も重要であり、正しい食習慣を身につけることで生活のリズムも規則正しくなり前向きに生きていく力が生まれます。だからこそ知識だけでなく、さまざまな体験から得られる経験が食育にとって重要な要素となっているのです。私は、このことを母から体験を通して学びました。豊かな食環境下にありながら誤った食習慣のために健康を害している人が多くいます。好きなものを好きなだけ食べる食生活では健康を維持することはできません。しかし、食事を楽しむことで人生を充実させることも必要です。子ども時代を思い返して思うことは強制するのではなく、自分自身で選び、生活に合った食事の管理ができるように育てることが大切なのではないかと思います。


井部 奈生子(いべ なおこ)

管理栄養士、健康咀嚼指導士。国際学院埼玉短期大学専攻科食物栄養専攻卒業後、女子栄養大学大学院栄養学研究科修士課程終了。戸板女子短期大学給食管理研究室助手を経て現在は、白梅学園短期大学、東横学園女子短期大学にて講師を勤める。研究テーマ・論文等は「新生児マス・スクリーニングで発見されたフェニルケトン尿症の生活状況に関する研究」、現在の研究テーマは「食品のテクスチャーとその官能評価について」




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